私を惚れさせて。私の虜になって。

「トイレって、行けんのかな」

そう言いながら、松木は立った。

「わかんない」

「行ってみる」

「うん」

学ランを置きっぱなしで、歩き出してしまった。

私はおにぎりを一口たべる。

本当は、食欲なんて微塵も無いけれど。

「あっ…」

幸か不幸か、

お母さんの、味がした。

「うっ…うぅぅー」

お母さんのこの味のおにぎりは、

もう、食べれないのかな。

食べれない、んだよね…。

「おかあ…おかあさぁーん…」

学ランを握りしめた。

勝手に、こんなことしたらダメかもしれないけど。