空にはオレンジが溢れ、太陽は沈みかけていた。
「おらあっ! かかってこい!」
30メートルほど離れた場所。
バンパーのへこんだ車の上で、仁王立ちした純也が雄叫びを上げる。
……まったく。
いくらゾンビを引きつけるって言っても騒ぎすぎだ。
案の定、私達の近くにいたゾンビだけじゃなく、遠くにいたゾンビまで引き寄せられている。
「……あの、バカ」
私と同じことを考えていたのか、武志がボヤいている。
「急ぎましょう。いくらあの2人でも、あの数は無謀だわ」
紫音先輩を先頭に、小百合を背負った武志、澪と続き、最後に私という隊形で進む。武装した2人で非武装組を挟む形だ。
柏木先輩と純也が音を立ててゾンビと戦い始めたから多少の物音は気にせずに歩けるけど、車や死体を避けてジグザグに、しかも警戒しながらだと、思いの外早くは進めない。
さらに暗くなり始めたせいもあってか、私と澪は一度ずつ足を滑らせて転んでしまった。
「もうっ! なんで澪ばっかり」
二度目の尻餅をついて、半べそをかきながら澪がむくれる。
「お尻痛いよ~」
「がんばろう。もう少しだよ」
「あっ、これ見てよ。このせいで滑るんだよ」
澪が上履きを脱いで底をこちらに向けると、べったりと何かが付着していた。
「血、かな……」
「……たぶん」
これでは、転ぶのも当たり前だ。


