「そうねえ……武志くんならどっちへ進む?」


質問を質問で返された武志は、何故か私にチラッと視線を向けてから、


「浦高橋」


と、答えた。


それを聞いて私は思わず「あっ!」と声を漏らしていた。


ここから浦高橋方面には私の家があるのだ。
もしかして武志は、唯一親の安否確認ができていない私のために?


武志を見ると、肯定するようにニコッと笑みを見せた。


私もありがとうの意味を込めて微笑み返すと、それを見た澪が、


「な~んであおいと見つめ合ってんのよ!」


と、武志の頬をつねりだす。


一瞬、フォローしようかとも思ったけど、まあ、なんだかんだ言ってイチャついているだけだから放っておくことにした。


「みんなも浦高橋でいいかしら」


そんな2人はさておき、紫音先輩がまとめようとしたところで、


「僕の家へ行こう」


と、柏木先輩が意外な提案をする。


「もうすぐ暗くなる。夜の移動は危険だ」




言われてみれば陽が西に傾きはじめていた。


明るいうちなら、目の悪いゾンビに何とか対抗もできたけど、暗くなれば私達は極端に不利になる。


暗闇では全力で走ることもできないし、この先街の中がどうなってるかも分からないのだ。


本音はすぐに避難したい。だけど、考えればそれは現実的ではなかった。


それに闇とゾンビ……。想像しただけで寒気がしてきた。


「……確かにそうね。けが人もいることだし。──みんなはどう?」


「賛成です。正直、体力が限界です」


まだ、澪にほっぺたを引っ張られながら武志が賛同する。


「腹も減ったな」


と純也。


小百合も澪も頷いている。私もゆっくり休めるのなら異論はない。


結局全員一致で、近くにあるという柏木先輩の家に向かうことになった。