「……小百合」


明美のこと……。


私は小百合の親友だった明美を弓で射てしまったのだ。


なんて言えばいいのだろう……。


もし、誰かが澪に同じことをしたら私なら許せない気がする。例えゾンビになったとしても澪は澪だから……。


そんなことを考えているのが顔に出てしまっていたのかな。


小百合は首を小さく横に振って、


「あおいちゃん、無事でよかった」


と、微笑んでくれた。


その目は、何も言わなくていい。そう言ってくれていた。


私は無言で頷いて、小百合もぎゅっと抱きしめる。


なんだか、ゾンビが現れてから、女同士で抱きしめ合ってばかりだ。


でも、こうすると想いが直接身体から伝わる気がして、そし同時に安心もするから。




「それじゃあ、みんな。そろそろ移動しましょうか」


紫音先輩が立ち上がり、澪が意地でも離さなかったバックからカラの矢筒へ矢を補充する。


「どっち方面へ行くんですか」


と武志。


そういえば、まだ話し合っていなかった。


面積の半分以上が埋め立て地で、外周は海と川で囲まれている浦高市。


この町から出るには船で海に出るか、二つある橋のうちどちらかを渡る必要があるのだ。


船なんてないし操縦もできないから、必然的に向かう先は橋ということになる。


一つは同じC県に属する伊知川市に繋がる伊知川大橋。もう一つはT県に渡る浦高橋。


私達の学校は海に近い埋め立て地にあって、どちらに行くにも同じぐらいの距離がある。