高校2年の7月。
眩しい日差しが照りつける夏の日。
すべてはこの日から始まった。





「おはよう! あおい」


教室に入ると、いつものように澪(みお)が私に抱きついてくる。


「おはよう」


挨拶を返すと、澪は嬉しそうにニッコリと笑う。
小さくて人懐っこくて可愛らしい。私の自慢の親友だ。


「ねえ、夜中の火事みた? 凄かったよね~」


火事? 何のことだろう。


窓際の席に座り、前に腰掛けた澪に首を傾げてみせると、


「朝のニュースでもやってたぞ。見てないのか」


と、澪の彼氏の武志がやってくる。
武志はサッカー部のエースで頭も良く、男女問わずに結構な人気者。
澪とはお似合いのカップル。


「確か、国立疾病管理センターだったかな。ここから近いぞ」


「うちからは爆発音も聞こえたんだよ。あおい気付かなかったの?」 


澪の家から私の家は歩いて五分の距離。確かに外が騒がしければ、気付くだろう。
でも昨日は。


「夏風邪ひいたみたいで、薬飲んで十時には寝ちゃったんだよね。でもそんなに凄かったの?」


「凄いも何も、さっきからみんなその話で盛り上がってんだよ。幸希(こうき)なんか現場まで見に行ったらしいぞ」


言われてみれば、みんな何カ所かにかたまっていつも以上にざわついてる。