「ご、ごめん。大丈夫?」


慌てて謝ると、安心させるように笑い、また口を開いた。


「フェアじゃ、ねえだろ」


「なに、言って……」


「約束、しちまったんだよ、幸希と。──抜け駆けしねえって」


「えっ……!?」



「俺は、あおいが好きだ」


「──!?」


突然の、告白。


純也は言いながら、そっと私を引き寄せた。


私は逆らわずに純也の大きな胸に顔を埋めた。


「俺は……、ずっと、昔から、あおい一筋だ」


「…………うん」


びっくりした。でも、嬉しかった。


恋愛とかそんなのはどうでもよかった。
ただ、純粋に、その言葉が純也の口から紡がれて、どうしようもなく嬉しかった。


幼い頃からずっと一緒で、隣にいるのが当たり前で、これからもずっと一緒だと思っていた純也。
私達は変わらない。


そう思っていた。



なのに…………。


「おああっ!」


純也が、突然身悶えし始めた。
身体が小刻みに痙攣している。


「純也! いやだ! ねえ、しっかりして!」


「は、な、れ、ろ」


純也は私を振り払うと、震える足で立ち上がった。


「……げん……かい……だ」


「いやだ! 純也、死なないで! 一緒にいてよ!」


純也にすがろうとすると、すぐ側にいた柏木先輩が私を押さえつけた。


「……あ、おい……死ぬなよ」


背中越しに言うと、純也は覚束ない足取りで歩き出してしまう。






「純也ーーっっ!」






そうして、純也は私の前から消え去ってしまった。