私と瑠璃は、いつものように、机が向かい合うようにくっつけてお弁当を広げた。

今思えば、さっきまで寝ていたのにも関わらず、やっとお昼の時間になった。今日は、一日が長く感じて、お腹が空くのも早かった──お腹が空き過ぎて、一日が長く感じてしまっているのかもしれない。

寝ている間に、お腹は鳴っていなかっただろうか。少し気になってしまって、鳴っていたらのことを考えると恥ずかしくて、顔が赤くなってしまう。

「麻友、食べないの?」
「ほぇ?あ、食べるよ」

勝手に考えて、顔を赤くしている方が恥ずかしいのかもしれない。それに、ほぇ?などという間抜けな声を出してしまった。この癖は、治らないだろうか。とても恥ずかしい。

私と瑠璃は、「いただきまーす」と食べ始める。

私の今日のお弁当の中身は、卵焼きやタコさんウインナー、トマト、レタス、生姜焼きだった。ご飯には、鮭フレークがふりかかっていた。

「わー、麻友のお弁当美味しそうだね」

瑠璃は、お昼ご飯のサンドイッチの袋を開けながら、私のお弁当の中身を見た。

「そお?」
「うん、さすが麻友のお母さんだよー!褒めてたって言っといて」

もう7年もの付き合いになる彼女は、私の家にもよく来ていた。そのために、お母さんとも仲良くなり、お母さんは、自分の娘のように瑠璃と接していた。

「わかったわかった」

最近、瑠璃のテンションが以上に高い気がする。何かいいことでもあったのだろうか。

私は、ご飯を口に運ぶ。

「ねー、麻友。なんでそんなにちょっとずつ食べるの?」
「え?普通だよ」

私は、そんなに小口なんだろうか。

「いや、ちっちゃいって」

そういいながら、大きな口で卵のサンドイッチを頬張る瑠璃。どう考えても、瑠璃の口が大きいだけではないだろうか...。

「瑠璃の方が大きいじゃない」
「いやいやいや、そんなわけないじゃん。ねぇ、蘭、凪ぃー!!」

あ、ついに話を振った。

瑠璃が話を振ったのは、近くでお弁当を食べていた、蘭と凪という同じクラスの女の子だ。

蘭は、セミロングで、とても元気がよく、暗い表情をあまり見せない子。
凪は、肩につくくらいの髪を二つで束ねている。身長が145cmで、ちっちゃくて可愛らしい。
彼女らも、小学校の頃から仲が良く、四人で遊んだりもしていた。

「何?いきなり話を振ってきて」
「ご飯食べる時、私の口って大きいの?」
「うん、すっごく」

凪は、スラリと言った。
昔からの毒舌が治らないようだ。

「えー、嘘ぉー」
「嘘じゃないよ。ジンベエザメみたいに、口をおっきく開けて食べてるよ」

瑠璃は、どれだけ自覚がなかったのか。少し恐ろしいかもしれない。

それに、凪のジンベエザメという例えがすごかったように思える。

瑠璃は、どう言われようとも、小口になることなく、大きなジンベエザメのような口で、サンドイッチを食べていく。
そんなこんなで、もう少しで食べ始めてから15分が経つ。当然、瑠璃は、あっという間に食べ終わっていたが、私と蘭、凪はまだ食べ終わっていない。

瑠璃は、食べ終わるの早いなぁ。外見から想像できないわ。

そう思いながら、お弁当を20分かけてたいらげた。

「ふー、お腹いっぱい」

私達は、お弁当を片づけ、机を元に戻して、お昼休みにすることにした。

「あー。麻友、何しよっか」
「んー、特にないんだよね。でも、五時間目は理科で移動教室だから、早めに行かなきゃね」
「暇だ、いつも通りに」
「そうだね」

中学に入ってから、遊ぶ場所(遊具など)がなくなった為、昼休みにすることがなくなったのだ。

「んー、どうしよう」
「理科室はまだ開いていないし」