[一]

これは夢だろうか。

全体が少しぼやけていて、明確にはわからない。
でも、ここは海だということは波の音でわかった。ザー、ザーっと何回も波が打っている。周りが茜色に染まっていることから、夕暮れ時だろう。

私は、その茜色の空と海を眺めていた。

しばらくすると、早送りをしたかのように時間が進んだ。

私の近くには、背の低い男の子。猫っ毛の髪。白いワイシャツに茶色いハーフパンツ。とても穏やかそうな雰囲気だ。

名前もわからない彼と幼い私は、どうやら話をしているようだ。何の話をしているのだろう。波の音で、何を話しているか聞き取れない。

彼は、座っている私に手を差し伸べた。温かい笑みを浮かべながら。