クレームの女王

「やっぱりこわいよ」


祐樹が交差点から後ずさりしながらそう言った。


麗華はそんな祐樹の手を握った。


「大丈夫よ。怖くない。今度はママも
一緒に渡るから。


二人で渡れば怖くないでしょ?」


麗華は祐樹に精いっぱいの笑顔を作った。



「じゃあ一緒に逝こうか」


二人は赤信号の横断歩道の端に立っている。


眼前を走る大型車の風圧で
よろける祐樹。


道路に転がっている空き缶が
車にひかれて唾されているのが見える。