クレームの女王

そう言って刑事は去って行った。


防犯カメラの映像を確認されれば
麗華が逮捕されるのも時間の問題。



しかし麗華にもう焦る様子はなかった。



刑事が歩いて行った方向を
じっと見つめた後



麗華は歩き始めた。


「ママこれ」


麗華が落としたバッグを祐樹が
渡す。


「ありがとう」


にっこりと笑う麗華。


これから二人はどこに行くというのだろうか?


だが麗華ははっきりとした意思をもって
歩いている。


その時祐樹が小さな声で尋ねた。


「ママはなんかわるいことしたの?」


その問いに麗華は祐樹の方を振り向かず
事もなげに言い放った。


「したよ。パパを殺した」