とある金曜日の昼—。

 窓に桜のディスプレイが彩られているかの様な窓の外の桜群。
 木漏れ日。その春の陽射しは臆病で泥棒家業から足を洗おうと考えている盗人のごとく教室に射し込んでくる。

 箸矢涼は誰にも手を差し伸べるはずの木漏れ日に全く相手にされない一番廊下側の一番前の席に座っていた。