箸矢涼が退学したという話を担任の教師から月曜の朝に聴いた。
 クラスメート達はさほど驚かなかった。関心を示さなかった。

 「……」

 茶碗子はショックを隠せなかった。
 この日は春の嵐だった。
 梅雨が前倒しなのか大雨だった。
 窓にバチバチと雨がリズムよくぶつかっていた。その音を聴いた茶碗子は雨が教室に入りたがっているのだと想った。だから窓を開けて雨を教室の中に入れてあげたくなった。

 「……」

 家庭の事情—。
 担任の教師は箸矢の退学理由をこう説明した。

 「……」

 茶碗子はそれが嘘だと感じた。
 家庭の事情ではない。
 心の事情だと。