靴を豪快に脱ぎ捨てた。 手は使わない。 脚の反動だけで靴を脱ぐやや高度な技術。 投げ捨てられ宙を舞った靴は昔ながらの蚊取り線香の様な靴箱に当たり地面へ着足した。 「お母さんー!お母さんー!」 茶碗子はワガママな末っ子の幼稚園児の様な金切り声で母親を呼んだ。 母親は玄関を開けた時点で茶碗子の存在に気づいている。 何せ薄っぺらな割に分厚い音を奏でる玄関のドアだ。 すぐに帰り人を知らせてくれる。 しかし茶碗子は何度も何度も母親を呼び続ける。 一秒でも早く母親の声が聴きたいから。