元々美羽に怒っていたわけではないし、母さんに怒っていたわけでもない。



ただ、なにも言ってくれなかったことに信用されていなかったのか、

とか、

どうして教えてくれなかったのか、

とか、思考がぐちゃぐちゃになったんだ。



美羽をわけもなく傷つけてしまいそうで、怖くもなった。




スマホで通話を終えた母さんが、
じゃあ私はこれで、と。



最後にそっと頭を撫でられて、気恥ずかしくなった。




母さんの背中が見えなくなってから、

風にのって、高い……きれいな声が。


「……蓮くん」


美羽の声が、聞こえた。



「み、わ」



振り返ると、両手で顔を覆った美羽が立っていた。



黒い、ストレートのロングヘア。

色白で……、
近所の私立の女子校の制服を着ていた。



「……ごめんなさい、蓮くん。
ずっとずっとなにも言わなくて。
うそついてて……ごめんなさい。

うそばっかりついて、ごめんなさい……」