「母さん」
「……れ、ん?
まぁ……大きくなったのね。
一瞬、誰だかわからなかったわ」
「まあ、成長期だし」
公園の木の下で立っていた母さんは、おれの前からいなくなった数年前とあまり変わっていなかった。
それに少しほっとする。
久しぶりに会えて、素直に嬉しかった。
けれど、そんな気持ちとは裏腹に、声がどうしても突き放してしまう。
「それで、……話って」
「……蓮のこと、置いていなくなっちゃってごめんなさい。
まず、それを謝らせて欲しくて」
「……うん」
「……もう、きっと察していると思うんだけど……」
「……うん」
そのあとの話は大体予想通りだった。
母さんは高瀬さんって男の人と再婚して、苗字が変わった。
それでいまはその高瀬さんとの間に子供がふたりいる。
そのうちのひとりはもちろん、美羽なんだけど……美羽は高瀬さんの連れ子で、母さんと血の繋がりはない。
だけど母さんは美羽のことを本当の娘だと思っているし、
美羽も母さんのことを本当のお母さんのように思っている。

