「あら? 美羽ちゃん、誰かとお電話中?」

「お、かあさっ……」



美羽が受話器を耳から離したんだろう。


クリアだった美羽の声が遠くなって。



「……どういうこと? 美羽」



おれはそう、声をしぼりだした。



「ちがっ……!
待って、蓮くん、ごめんなさい!
わたし……!」

「……れ、ん?」



早口になった、美羽のいつもの高い声が、耳元でキンと響く。



美羽の声の隙間から聞こえてくる、母さんの声。



「……ごめん、美羽。 切るね」

「蓮く……!」




整理がつかないとか、それどころじゃない。



頭のなかで糸が何重にも絡まってるような。




これ以上、美羽との電話を続けていたら、予想がつき始めた真実を、美羽に責め立ててしまいそうだった。




手元のスマホがブーブーと震える。


表示には、〈高瀬美羽〉。