結局、榛名の心の声は聞こえないまま、
数日が経った。
しばらくすれば、クラスにも友達ができ
梅は自分以外の女の子と喋る菫を見てホッとした。
そして、一番ビックリしたのは榛名と喋る光景を見るときだった。
男の子と喋るのが苦手だった菫は、榛名となら少し喋れるようで、ぎこちなくだが自分から喋っているのだった。
いつもなら、菫のボディガードに回るのだが、榛名はチャラチャラしてないし、まだまだ純粋な男の子であることを確信したのである。
コトンッ
静かな教室に何か落ちた音がした。
梅は、ちらりと後ろを見ると、菫が慌てて
キョロキョロと何か探していた。
菫は自分が落とした消しゴムを見つけ、拾おうとした。
「「あ。」」
ぴとっとと手が重なると同時に顔をあげると
目の前には榛名がいた。
「わ、わ、ごめんな!」
と、慌てて榛名は手を離し、机に伏せる。
菫は、小さく「ありがと」と言うと
榛名は机に伏せたまま、顔を縦に振った。
その様子をみた梅は、
『あぁ、こいつは問題ねーわ』と確信した。
問題ありなのは、こいつだった。
「菫ちゃーん!今度さ!今度さ!ケーキ食べに行かない?」
びくぅっと菫の肩があがる。
急に飛び出してきた谷上に驚いたのだ。
菫は困った顔で谷上を見る。
『え?何?誘ってるの?』
そんな心の声が聞こえた。
菫はふりふりと横に振ると、
「えー!行こうよ行こうよー!」
としつこく誘う。
「おい」
そこに声をかけるのはいつも梅だ。
「しつこい男は嫌われるよ」
「はははー、榛名ちゃーんいじめるよー梅ちゃんがー」
谷上が助けを求める先はいつも榛名だ。
「無理に誘ったら可哀想だろ?」
そして、いつも榛名に怒られるのである。
そんな光景を菫はいつも柔らかな笑顔で見る。
こんなほのぼのが菫には一番似合うと思った。
そして、いつまでも続いて欲しいと思った。
