ポツリと菫が言う。
榛名は何がと聞き返す。
「心の声」
とだけ、菫は言った。
梅にはわかったが、榛名にはさっぱりわからなかった。

菫ははっとなり、榛名にお礼を言った。
榛名は柔らかな笑顔で返した。

帰りは3人で帰ることになった。
菫はふと、どうやって運んだのかが気になり
ぎこちない喋り方で聞いてみた。

「え?俺が運んだよ?」
と榛名は笑顔で答えた。

ぼぼぼぼっと菫は面白いぐらいに顔を赤く染める。梅は笑いが止まらなかった。
眉をハの字にして、頬を真っ赤にさせた菫は榛名に何度も消えてしまいそうな声で
「ごめんなさい」
と言った。その度に笑顔で大丈夫だと榛名は言った。

その時も、その後も
榛名の心の声は一度も聞こえなかった。