翌日、事件のことは噂になっていた。

あまり目立っていなかった私の欠点も、私の話をするたびに聞こえる。

気がつけば、噂が噂をよんで、私は大悟に振り向いて欲しくて、事件を起こしたなんてことになっていた。

でも、否定しても、噂は悪くなる一方。

だから私は、流れに任せて、良くなるまで、誰とも話さずにいようと決めた。

ある日、いつものように、学校での1日が終わり、帰りの用意をして帰ろうとした時、自分の机の近くに誰かの荷物が落ちていた。

教室には誰もいなかったし、いたとしても、話せない。

どうしようかと考えているうちに誰かのバタバタっという足音と、教室のドアが開くガラッという音がした。



大悟だ。

大悟は、私が持っている荷物を見て


「あ!!それ俺の!!」


と言い、私の方に来た。

そうか。

この荷物は大悟のだったのか。

そう思っているときに、

「ありがとう!!

忘れてたんだ!!

どこにあるかと思った〜!!

ありがとな!!」

と大悟が言って、私の手の中にある荷物をとった。

その時に、大悟の手が私の手に触れた。

慌てて大悟から離れた。

「ど、どういたしまして。」

そう言って、帰りの用意をするふりをした。

用意なんてないのに。

久しぶりに大悟と話した。

「ねぇ、最近加藤おかしいよ。

なんか俺のこと、避けてない??

どうかした??

俺なんかした??」

大悟が聞いてきた。

本当のことを話しても、気をきかせるだけだ。

私は、
「ううん。何にもないよ。

忘れ物、見つかって良かったね。」
そう言った。

大悟の顔をまともに見ないようにした。


「うん。

ありがとな。

また明日!!」

そう言って、大悟は教室から出て行った。

その時、ホッとしたのか、嬉しかったのか、それとも、悲しかったのか、私の目に涙が浮かんだ。



ポタッポタッ。


流れてくる涙は止まらない。

急にまたドアが開いた。


大悟だ。



「ねぇ、本当に大丈夫??

ってうわ!!

やっぱり大丈夫じゃないじゃん!」


涙を拭こうとするのに、涙が止まらない。

とりあえず、落ち着いてから、大悟と帰ることにした。

途中の公園で話してくれたらいいと。


公園につきベンチに座った。

公園には誰もいなかった。

私は、大悟に今までのことを話した。

噂のことを、なぜ避けたのかを。


「そんなことで、加藤は俺達を避けてたの??」

私は声を出さずに頷いた。

「それは違う!!

例えそうだったとして、俺が噂なんかで嫌われるんだったら、俺はそれまでの男!

それに、そんな小さい噂なら、すぐにおさまる!!

そんなの気にするな!!

それに、そんなので離れるとか、全部俺の決めることじゃん!!

でも、俺は加藤と話したいから、今もこうして話してるじゃん!!」


大悟が一息ついて、もう一度口を開いた。

「でも、ありがとな。

俺のこと、そんなに考えていてくれて。」
私は、また涙を流した。

今度は本当に嬉しかった。


「わ!!

ごめん!!

びっくりさせちゃった??」

大悟が慌てて私の顔を覗いてきた。

「ううん。

違うの。

嬉しかったの。

私は、今まで私が悪いと思って、我慢してたの。

でも、それを否定してくれた人がいたから。

それに、その人は私にこんなに優しくしてくれる。

本当に嬉しかった。

ありがとう!!」

私は知らなかったけど、この時、私は久しぶりに笑ったのだ。

私はこの時、大悟が、他の人と比べられないくらい大好きだという気持ちが、できたのだ。