事件は1学期に起きた。



その日も、普段と変わらず、授業をうけて、休み時間がなんとなく終わる。

そんなはずだった。

休み時間のチャイムがなり私は、図書館に行こうと席を立った。

その時、


「この鉛筆折ってもいい??」


「いいよ」


クラスの男子と女子の会話だった。

バキっ!!

信じられなかった。

まるで、楽しみの一部としているようだった。

私は、思わず、


「え???何で??」

声をあげてしまった。

またもやってしまった。

「何が??」

「あ、ううん。何もない。ごめんなさい。」

急いで出て行こうとしたら、

「何で加藤が謝るの??加藤は何もしてないじゃん。」

大悟だった。

私は教室を出る際に少しクラスの子が話すのを聞いた。

でも、その先は、聞こえなかったけど、何も悪くない、という大悟の言葉は、素直に嬉しかった。

図書室に行って少し気持ちを落ち着かせて、本を借りて教室に戻った。

その時だった。

「何だよ〜。何でそんなに怒ってるんだよ〜。」

大悟に向かって言っていた。

まだ続いているの??

そんなはずがない。

私をかばったところで、何の得もない。

それどころか、私と同じように、いや、この事件がきっかけで、嫌われてしまうかもしれない。

とりあえず、中に入ろうとしたけど、大悟と話している男子が邪魔で入れなかった。

「別に。何で加藤のことをそんなに言うのかがわからない。

それに、加藤はずっと前から正しいことしか言ってないじゃん。」

大悟だった。

まさかと思ったけど、そうだった。

「何だよ〜。

何でそんなに加藤のことかばうんだよ〜。
大悟、加藤のこと好きなのかよ〜。」

それを聞いていたクラスの子がドッと笑った。
「何で笑うの??そんなにおかしかった??」

クラスの中が沈黙に包まれた。

私も、固まってしまった。

これでは、クラスの子から、大悟が誤解されて、嫌われてしまう。

「ごめんなさい。少し通して。」

皆がこっちを向いた。

いやに、ドキドキする。
「あの、別に大悟は、私をかばってるわけじゃないの。

大悟は、クラスの中心的存在だし、もめごとが嫌いなだけだと思うの。

ただ...

私は、何も悪くない、その言葉は、嬉しかった。

ありがとう、大悟。」

皆が何も話さない。

また雰囲気を壊してしまった。

でも、誰かを傷つけたくはない。

特に、大悟みたいな優しい人は。

この事件で、私は、もう、皆に嫌われたのかもしれない。

もう、大悟とも話さない。

話しても、何らかの噂がかかり、大悟に迷惑がかかる。

そんなクラスだって、わかるから。