新聞も配り終えて、夏祭り委員会の仕事は一段落。

その次の日も、その次の日も、なんだか同じような日常ばかり。

暇過ぎて、もう夏休みの宿題も終わってしまった。


「ん~!!

 暇過ぎる!!」


部屋の中で叫ぶ私。

でもいいや。

そろそろダンスの大会の練習も本格的に始まるかな。

それにしても、暇だし。

そうだ散歩でもしてこようかな。

ついでに本なんかも読んで気分転換しよう!!

明日の朝は早く起きるから、今日は早めに寝ようかな。




次の日の朝。

早めにと言っても結局起きたのは7時。

まぁいいや。

着替えも終わったし誰も起きていない中、私はそうっと家を出た。



やっぱり夏でも朝は気持ち良い。

少し涼しめだから、上着も持ってきて正解だった。

今日のルートは、うーん...

まぁ、いつもの公園近くでいいよね。

あそこならベンチもあるしゆっくりできるし。

結局散歩と言っても読書の為にあるようなものになってしまった。



やはり、公園には10分もしないうちに到着した。

早速、新しく買った本を読み始める。

すると、


「え??  加藤??」


最近は顔を見なくても誰だかすぐにわかる。


大悟だ。

懐かしいな。


「あれ? どうしたの?? 

 今日休日だよね??」


ビックリした私に向こうも同じような反応。


「俺はね、いつもこの辺りをジョギングして、サッカーの練習するんだ。」


あ。

そうだ。

大悟は、学校一のサッカー少年だ。

大悟は、私の知っている限りでは、確かすごくサッカーが上手で、

何百人に一人と言われている、サッカーチームのスカウトが来たほどだ。


「加藤は??」


「私は、最近暇だから、今日は朝早くから涼しいところで読書をしたいな

 って思って。

 ほら、地区の新聞終ってから、やらなきゃいけないっていうことがなくて、

 だいぶ暇じゃん?」


「うん。

 俺もだけど、宿題済んだの??」


ビックリした顔の大悟がきいてくる。


「え??

 うん。
 
 まぁ、一応ね。」


すると大悟は、

「まじで!?

 俺、後2ページぐらい残ってんだけど。」


いやいや、そこまで変わんないじゃん。

そうそう、大悟は、スポーツもすごいけど、頭もいい。

自分で言うのもなんなんだけど、クラスの中でも、

けっこう上位をいくのは私と、大悟と、もう一人の男子の

大谷 誠 と3人で勝負しているくらい。

大悟もすごいけど、大谷もまたすごい!!

そんな2人に、負けないように、努力していた。

塾に入ったのは、受験のほかにもそんな理由があったからだ。

大谷は去年もクラスが一緒で受験をやるって言っててだから隣だった時は

「マラソン大会は受験の日に近いから、俺たち今年が最後だな。」

とかって話してたっけ??

大谷も結構優しいし、面白いし、授業中けっこう一緒にふざけてたなぁ。

授業中に一緒に消しピンやってて、一緒に先生に説教されたな。

大谷も大悟と同じで、あんまり私の性格について言ってこないんだな。

ただ、よく「バーカ」とか言われるけどね。

そんあことを思い出していると、



「おーい。

 加藤、聞いてる??」


いきなり視界が暗くなったと思ったらそれは大悟の手だった。



「え??

 うん。
 
 聞いてるよ。

 残り2ページとかそこまで変わんなくない??」


するとまた大悟にびっくりされた。


「いやいや、その話じゃなくて!!

 加藤は受験とかするの??」


あれ??

そんな話になってたの??

いや、私、失礼すぎるでしょ!!


「うん。

 って言ってもすごく簡単なところだよ。」


またまた、大悟にびっくりされた。


「え??

 受験するんだ...。」


そういった大悟の目はいつもと何か違った。

気のせいかな??

でも、何か言い表せない何かがひっかかる。



「そうだ。

 簡単な学校ならなんで塾行くの??」


う...。


それは何とも子供っぽい理由。

あまり聞かれたくなかったかも。

まぁでも、この際何でもいいや!


「最近、私と、大悟と、大谷でいろんな科目競ってるじゃん??

 なんか、私、2人においていかれそうな気がするから...。」


だいぶ恥ずかしい。


「え??

 俺たちに張り合うために塾に入ってんの??」


「....。 
 
 はい。そうです///。」


「そんなん、

 めちゃくちゃ可愛いじゃん///。」


いくら、幼いという意味でも「可愛い」と言われるとドキッとする。


「でもさ、加藤の目指す学校って、どんなところ??

 あ!!

 そういえば、俺の兄ちゃんが行きたいって言ってた学校の方の

 中等部だっけ??」


そういえば、お母さんからそんなこと聞いた気がする。



「うん!!

 すごく変わってて、面白そうな学校!

 しかも、国際学校だから英語もできるようになれるの!!

 恥ずかしいけど、こんな自分を変えられるいいチャンスかな

 って思うの。 
 
 学費は異様に高いけどね。」


もし、大悟のお兄ちゃんが入ってくるなら、


「大悟も、わた...お兄ちゃんと同じ学校目指してるの??」


少しの期待を胸に聞いてみる。

すると、大悟は、


「ううん。

 残念ながら。

 それに、兄ちゃんも加藤と同じ学校行くかどうかわからないってとこ。

 加藤が言うように、学費が高いからね。」


そっか。なんだか、悲しい。

ってことは、私が受験に受かったら、大悟と違う中学校。

なんだか、複雑だな。



「そんなことよりさ、加藤忘れてないよね??

 親子まつりの事。」


大悟がきいてくる。


「うん!!

 もちろん!



 忘れるわけないじゃん...。」


そうやって、最後の言葉がポロリと出てしまう。


「ん??

 なんて??」


あ!!

良かった!!

聞こえなかったみたい。


結局、私達はそのまま2時間喋り続けて、



「わ!!

 そろそろ帰らないと!!」

気づいて時計を見ると10時30分。



「ごめんね!!

 今日は帰るね!!」


そういって私は、公園を去る。


「わかった!!

 あ!!

 そうだ!!
 
 今度また、ここで朝会おう!!」


大悟からの嬉しい言葉。


「うん!!」


楽しみだなぁ。

6年生は私にとって特別な年になりそうです。