そして、勝負がはじまろうとしたその時。
　禍々しいオーラが万桜たちを包み込む。

「なに？
　この魔力……」

　万桜が、思わず声を漏らす。

「この魔力……
　ベルゼブブ？」

　いずみが、そう言うと黒い何かに包まれた何かが現れる。
　その大きさは、人の大きさとほぼ同じだった。
　それが、ふたつ。
　宙に浮いていた。

「これ、いずみ！
　主君に向かって呼び捨てとは何事じゃ！」

　そのふたつのうちひとつがそう言った。
　万桜の目にはそれは、老人に見えた。

「構わん」

　その声は恐ろしく万桜たちは生まれてこれ以上ないくらいの恐怖を感じた。

「ベルゼブブ。
　何のどうしてここへ？」

　しかし、いずみは恐怖を感じること無くそう尋ねた。

「モトフミからの伝言だ。
　この場は引き上げろと……」

　黒い鎧を着た何かがそう言うと、いずみは言葉を返す。

「どうして？」

「何故なら。
　今すぐグングニルを放出するからだ……」

　黒い鎧を着た何かが腕を上げると万桜たちのうしろに大きな光柱ができる。
　第二のグングニルが放たれたのだ。