婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「うん、わかった。目を閉じて」私がアッサリ了承すると、葛城は驚いたように目を見開く。

「ホラ早く」ムードなく私が急かすと素直に葛城は従った。

ネックレスだけじゃない、理由に何にせよ葛城は大学にも行かせてくれたんだ。

感謝の気持ちを示すのに、キスなんて安いもんじゃないか。

…とは言いつつも、目を閉じた葛城の顔を見ていると恥ずかしさが込みあげてくる。

ええい!キスの一つや二つ!

私は啄ばむような短いキスをする。

「いやいやいや、ちょっと待って、今の何?」早速葛城は異議を申し立ててくる。

「キス」

「全然わからない、秒速でしょう?ちょっと掠めただけじゃん!そんなキスだから…」ガキって言われるんだよ。

…と続ける前に、両手で頬を挟んで再び唇を塞ぐ。今度はしっかりと。

葛城の唇は思ったよりも柔らかくて、それでいて暖かった。

キスをしながらこんな事を考えられるようになるなんて、私も随分余裕が出来てきたなぁ、と思う。

温もりに名残惜しさを感じながらも唇をそっと離す。

「ちょっとは大人になった?」

「まだまだ、だな。だけど進歩した事は評価しよう」

「何よ、偉そうに」

お互い見つめ合いクスリと微笑むと、どちらからともなく再び唇を重ねる。