婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「これはこれは、葛城君!わざわざ出迎えに来てくれるとは!」

パパが大荷物を抱えてひょこひょこと駆け寄ってきた。

ママは手ぶらのまま日傘をさしてゆっくりと後からついてきた。

「遠いところわざわざご足労いただきありがとうございます。小森さん」葛城は折り目正しく一礼する。

「人をやりますので、荷物はトランクに積んでおいていただいて結構ですよ」

「いや!大丈夫です。これくらいなんて事ない」大きな旅行用のスーツケースを引きずり、肩からはボストンバックをブラ下げている。

パパは痩せている上に背が小さいので荷物が歩いているようだ。

「では僕がスーツケースを運びましょう」葛城はパパの手からスマートにスーツケースを掠め取る。

「弟くんたちは僕と遥さんで後から連れて行きますので、ご両親は先に涼しいところで休んでいてください」

「ええ、ありがとう」ママがうっとりした目で返事をする。この外面の良さにまた騙されているようだ。

両親たちが家の方へ去って行くと「次はガキどもか」と葛城はボソリと呟く。

こいつの本性は明らかにこっちだろう。

葛城に名前を尋ねられたので「空良と櫂」の名前を教える。

「どっちがどっちだか解らないくらいそっくりだな」

「双子だから」私が言うと「なるほど」と葛城はちょっと驚いたように目を見開いた。

「おい!空良!櫂!」葛城は双子達に大声で呼びかける。

「先にこっちへ来た方に小遣いをやる!競争だ!」

「ちょっと子どもに何てこと言ってんのよ」私は目を吊り上げて怒る。