婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

緑の中に佇む、葛城家の別荘が姿を現すと「うわ!デッカイ!」と言って双子達はハシャギまくる。さっきまで死んだ魚の目をしていたのが嘘のようだ。

広大な敷地を贅沢に使用した平屋の建物が3棟繋らなって建っている。どの建物も真っ白な壁に大きな窓がとられており、屋根は黒く尖っている。

スイスの山間などに立てられたホテルを想わせるメルヘンな造りだ。

車から降りるとテンションが振り切れた双子達は広い敷地を駆けまわる。

「こら!空良!櫂!勝手にいろんな所へ行っちゃダメでしょう!」

私は慌てて後から追いかける。

しかし、元気な小学生の脚力に勉強ばかりしていた私が敵うわけもなく、すぐに息があがってしまう。

私は膝に手を置いて身体を前に倒しながらゼエゼエと肩で息をする。

「遥、来たね」背後からクスクスと笑い声が聞こえる。

呼吸が整わずしかめっ面で振り返ると、葛城がゆっくりと歩いてこちらへ向かってくる。出迎えに来てくれたようだ。

久しぶりに見るエレガントな婚約者の姿に思わずドキっとしてしまう。

その上、喧嘩別れの後だったから余計に気まずい。

「一泊二日ですがお世話になります」私はペコリと頭を下げた。

「いいえ、狭い所ですがゆっくりしていってください」葛城は他所行きの笑顔で言う。

「それ、嫌味でしょ」私が鼻の頭に皺を寄せていうと、葛城は可笑しそうに笑った。

今日の葛城は白い半そでのYシャツにに淡いブルーのコットンパンツを合わせて涼しげな装いだ。

「元気だった?」

「ええ、お陰様で。葛城さんは?」

「遥にすげない態度を取られて、涙に暮れていたよ」

その割にはこんがりと小麦色に日焼けしている。絵梨と海外でもいってきたのだろうか。

「良く言うわ」私は呆れたようにぐるりと目を回す。