婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「あ、ごめん」私は身体を起こそうとするが匠さんの長い腕に抑え込まれる。

「俺は後継ぎとしてのお役目をこれから果たして行かなきゃいけないんだ。遥も協力してくれるね?」

「も、勿論!」私はガッツポーズを作り力強く頷いた。

それは心強い、と言ってそのまま匠さんは私をベッドへ組敷いた。

「遥、跡取りとして最も重要なお役目ってなんだと思う?」

「商売繁盛?」

「うーん、それも重要だけど、もう一つある。だけどそれは俺一人では達成することが出来ない」

それって、まさか…

「し、子孫繁栄?」正解、と言って匠さんはにっこりと艶やかな笑みを浮かべる。

「い、いやでも仕事がまだ…」

「弊社は託児所も併設しており、女性に優しい職場作りを目指しています」

企業PRのキャッチフレーズかよ。

匠さんのキスに蕩けそうになりながらも、頭の片隅でぼんやりと突っ込んでみる。


こうして今夜も強引で我がままで自己中だけど、とびきり甘くてエレガントな婚約者に翻弄されていく。

匠さんと出会ったあの日から私の平凡で穏やかで、それでいて少しだけ退屈な日常が輝き始めた。

私の頬を愛おしそうに撫でる匠さんの手をそっと上から握る。

そのまま指を絡ませて互いの手しっかり繋ぎ合った。

何があっても私はこの手を離さない、共に白髪が生えるまで…多分。



私と匠さんが流行りのおめでた婚で周囲の度肝を抜くことになるのは、もう少し先の事となるのであった。



END