婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「本当は、まだ会社に入るのは早いと思ったからさ」

匠さんが想いもよらぬ事を口走ったので思わず視線を向ける。

「他所の会社で実績を作ったって、MBAを取得したって、所詮親の七光りを浴びたポっと出の若造だって周りには見られてるからね。俺が葛城商事の社員の立場でも同じことを思っただろうし」

ま、実際その通りなんだけど、と言って匠さんは自嘲気味に笑う。

自信満々で俺様の匠さんがいつになく弱気だ。

「そんな事ないよ」私はワイシャツをするりと脱がせてあげた。

「会社に入るのがすごく嫌だった。影では俺に対する風向きが強いのは目に見えてるから」

だけど、と言って匠さんは言葉を繋ぐ。

「遥がマテリアル部門で働いているって聞いたから、それなら頑張ってみようかなって思ったんだ」

「なによそれ子どもみたい」私はクスリと微笑んだ。

「仕事の上では何の役にも立たないけど、遥が同じ空間にいてくれるって思うだけで心強かった」

最後の部分は嬉しいけど、最初の方は微妙なのでなんだか素直に喜べない。

「公私共に支えてくれてありがとう」

匠さんは真っすぐ私の目を見つめて言う。

「わ、私なんかが匠さんの支えになってるの?」

匠さんは首をゆっくりと縦に振る。

「私なんかが…じゃないよ。遥がいてくれて本当によかったと思ってる」

「匠しゃん…」思わぬお言葉に目頭がジンと熱くなってしまった。

「お役に立てて嬉しい!」

Tシャツ姿の匠さんに齧りつくと勢い余ってそのまま後ろのベッドへと倒れ込む。