婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「まぁ、小柄で可愛らしい人です」匠さんはクスリと微笑んだ。

「常務の気持ちはすっかり婚約者の方にあるみたいですね」ユミは肩を竦めて言う。

「そうですね。僕がアメリカに行っていた間もずうっと待っていてくれたようですから」

ったく…調子に乗ってペラペラしゃべり過ぎなんだよ。

私はギュッと眉間に皺を寄せて匠さんを睨みつけたが、全く意に介す様子はない。

「遥、怖い顔してないで、お酒ついでくれる?」

周囲の様子に気を取られて、匠さんのグラスが空いていることに気がつかなかった。

「ごめんね、匠さん」私は慌ててシャンパンを注ぐ。

…しまった。

私がハッとして顔を上げると匠さんはニッコリと花のような笑みを浮かべた。

酔っ払っていたので条件反射的に名前を呼んでしまった。

痛恨のミス…。

みんな目を見開き驚愕の表情で私を凝視している。

「ふつーの家庭に育ったOLで、背は小柄、東栄大卒業で彼氏がアメリカに行っていた人ってまさか…」

総さまは恐る恐る私を指さす。

「う…そでしょ?遥…」ユミがボソリと呟いた。

「まぁ、そうゆう事なんで、フォローをよろしくお願いしますね、皆さん」

その数秒後、香織は「えええええー?!」と絶叫したが、側にいた小林に手で口を塞がれる。

「勿論オフレコで」

匠さんは例の絶対的なゴリ押しスマイルをお口あんぐり状態の一同へと向けたのだった。