婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「お坊ちゃんでしょ?絶対我がままだって。いかにも我の強そうな顔してるじゃない」

「そうかなー、すっごく優しそうだったけど」

香織の反論に私は何かの線がプチン、と切れる音がした。

「優しい?騙されちゃだめよ!あの笑顔で無茶を平気でゴリ押ししてくるような男なんだから!…多分」

「な、なんか遥こわーい」鬱憤が爆発した私を香織は怯えた目で私を見る。

「いかにも育ちがよくて誠実そうじゃない」ユミのフォローも私から言わせれば笑止千万だ。

私はッハと鼻で笑った。

「誠実?!あの男がそんな風に見えるの?!もうこれは詐欺の領域だわ!絶対女大好きだって!アメリカでは金の力に物を言わせて遊び狂ってたんでしょ!…多分」

婚約者である私を放っておいてね!…とまではさすがに言えない。

「遥、もうそれくらいにしておきなよ」取り乱す私を見てユミは切羽詰まった声色で言う。

だけど、一度溢れ出た鬱憤はすぐには止めることが出来ない。

「あの男が素敵だっていう気がしれない!自己中で強引で人の事を振り回す自分勝手なボンボンよ!!…多分」

私がヒステリックに声を張ると、ああ…と言わんばかりにユミと香織は額を抑えた。

「随分な言われようだね?そのボンボンも」

背後から聞き覚えのある声が聞こえて私の顔面に青い縦筋が入る。