婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「煙草くさい」

「へ?」思わず聞き返す。

「匠さん、また雀荘行ってたでしょ?」

「うん、稜たちと麻雀してた」

「しかも煙草吸ったでしょ」

す、鋭いな。

「何本か」嘘をついても仕方ないので素直に認める。

「お風呂に入って歯を磨くまでキスはなしにしてください」

「酷いな、それが旦那に取る態度か?!」俺は傷ついたふりをして大袈裟に肩を竦めると「まだ結婚してません」とすげ無く返される。

「早くお風呂に入ってきてください。その待ってるので」

頬を染めながらそんな事言われたら素直に従わざる得ない。

遥に言われた通り素直にバスルームへ向かった。

大きく息をつきながら湯船に身を沈める。

ここ最近、本宅へは着替えをしに行く以外には殆ど戻っていない。

帰宅するのは遥がいる離れの方だ。おかげで轟さんは寂しがっている。

離れは狭くてボロいけど、妙に居心地がいい。

こちらでの生活に慣れるとあの寒々しく広い家には何故か戻る気がしないのだ。

例えシャンプーが甘いラズベリーの香りだったとしても。


お風呂から上がって花柄のタオルで髪を拭くと、仄かに甘い香りが漂う。すっかり女子気分だ。

キッチンへ立寄ると遥はシンクで洗い物をしていた。

冷蔵庫を開けると、お気に入りのミネラルウォーターがきちんと冷やされている。

うむ、感心感心

そのままペットボトルの口を開けて一気に飲む。

「匠さん!」

突然声を上げたので俺は肩をビクリと痙攣させる。