婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「あとは心置きなく出発するだけ、か。楽しみだなー」

その『楽しみ』は俺に言ってくれているのか、それとも自分自身の気持ちなのだろうか。

中谷は俺がアメリカに行ったあかつきには、遥にまたちょっかいを出そうとしているのかもしれない。

「そうだな」苛立ちをタバコの煙と一緒に吐き出し俺は再び牌をひく。

チラリとみたが既に持っている牌だったのでそのまま捨てた。

「ポン!」と鳴いて中谷は俺が捨てた牌を横から掠め取り、自分の手牌に加える。

「悪いな葛城」

中谷は艶やかな笑みを浮かべると、ロン、と言って持牌を倒した。

「おっつ、小三元(ショウサンゲン)」

高得点の麻雀役に駆は悔しそうにピクリと眉をあげる。

「中谷の手の内を読めなかったとは完全に色ボケだな、匠」

稜が無表情のまま言い放った。


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麻雀に負けてムシャクシャしながら帰宅する。

俺は負ける事が大嫌いだ。例え遊びだとしても、だ。

それでも可愛い婚約者を見れば少しは気も晴れるだろう。

チャイムを鳴らすと中からパタパタと足音が聞こえてくる。

玄関に灯りが灯ると引き戸が開き中から愛しの婚約者が姿を現した。

「遅かったじゃない」なあんて言いつつも、瞳の奥は微笑んでいる。

俺が帰って来て嬉しいのだろう。

既にお風呂に入ったようでタオル生地のルームウェアに身を包んでおり、甘い香りがいつもより際立っている。

「ただいま」

玄関に入ると待ちきれずにキスをしようと身を屈める…が、遥は顔を背けて拒んだ。

いきなりガッツき過ぎたか。