婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「そう言えば、T社のインターンシップはいつから?」

「7月からよ」その整った横顔をジッと見つめる。

「まさか絵梨が自動車メーカーを選ぶとはね」

「意外?」絵梨が片眉を上げて聞き返す。この表情が俺は大好きだ。

「美貌を活かして、アンカーマンなんていいんじゃない?絵梨がお茶の間にニュースを届ける、なあんて素敵じゃないか」

そうすれば、会えなくなっても絵梨の笑顔を見ることが出来る。

…なんてことは言えないけど。

「もし、アナウンサーになって有名になったら匠の奥さんになれるかしらね」絵梨は長い睫毛を伏せた。

会社のために決められた相手と結婚するということは、以前から其れとなく伝えてある。

愛し合っているのに俺たちが一緒になることはない。

ああ…刹那。

だからこそ、絵梨への気持ちはより強くなっているのかもしれない。

不倫と同じ原理だ。

先がない、故に盛り上がる。

「絵梨がアナウンサーになったら俺なんて相手にしてくれなくなるんじゃないか」

そうね、と言って絵梨はぐるりと目を回す。

「たまにはデートくらいしてあげるわよ」

クスクス笑ながら俺たちはそっと唇を重ねた。


これが、自由でいたい理由。


俺があんなツマラナイオンナと一緒になる事を知ったら、きっと絵梨はその大きな瞳から真珠のように輝く大粒の涙を流すに違いない。


…なあんて、現実はそんなに美しいもんじゃなかった。