婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

小森遥は真面目な性格なので高価なプレゼントに引け目を感じるのか、律儀に応じる。

薄らと瞼を開けてみていると、緊張で睫毛を震わせながら柔らかな赤い唇をぎこちなく押し付けてくる。

甘い香りに煽られて、俺が強引に深く口付けると小森遥は息も絶え絶え答えてくれる。

受け入れられたようで嬉しくなり、赤く小さな唇を貪るようなキスをする。

ようやく俺が唇を解放すると小森遥は真っ赤な顔で苦しそうに息をつく。

唇は艶やかに濡れ、視線もとろんとしている。

この時の小森遥は最高に可愛い。

不屈の精神力を持つ俺ですらウッカリ手を出しそうになってしまうほど。


しかし、これ以上踏み入るのは御法度だ。

下手に結婚前に手をだして、処女の小森遥が俺に情を寄せては面倒な事になる。

「結婚まで純潔を守る」という建前を口実に深い関係になるのを俺は避けていた。

何故なら…俺には自由を護りたい理由が、ある。


「匠」

ソファーに座り経済誌を読んでいると不意に声をかけられる。

さらりとロングヘアをかきあげて、絵梨が隣に腰を下ろした。

「楽しい?」絵梨が傍から覗き込んでくる。

「手持ち無沙汰には丁度いい感じ」

「まあ、私と一緒にいるのに退屈なんて酷いじゃない」絵梨は俺を冗談めかして睨みつける。

「リラックスしてると言ってくれ」

「言い訳が上手なんだから」と言って微笑みながら俺の頬を軽くつねる。

絵梨は外交官の父親を持ち、裕福な家に生まれ育っている。

今一人暮らしをしているこのタワーマンションもパパの税金対策で買ったらしい。

天性の美貌と、明晰な頭脳を備え、性格も裏表がなく明朗快活だ。

当然ながら社交的で友達も多い。

そのため、賛美の言葉やプレゼントなど与えられることを自然と享受しており、我がままやおねだりを言うのも上手だ。

なんでも頑なに拒む意固地な小森遥とは全くもって正反対で、一緒にいるとすごく楽だ。