婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

店を出ると、肩をいからせて駅へ向かって歩いて行こうとする小さな後ろ姿を見つけた。

友人の駆が面白がって街中のチンピラさながら軽薄な調子で呼び止める。

小森遥は仏頂面で振り返って俺たちを睨みつけた。

「帰るんだったら送るよ」

優しい言葉を掛けてやっても無視される。

小森遥は地味だけど、なかなか強情らしい。

駆と稜は小森遥が本気で怒っているので、これ以上関わるのは厄介だといち早く察知して先に帰っていった。

あーあ、面倒臭いな。俺も帰りたい。

興味本位で婚約者を見てみようなんて思ったことをつくづく後悔する。

引いてダメなら押すまでだ。

「もしかして怒ってる?」

身体を屈めてその小さな顔を覗き込む。

小森遥からはふんわりと甘いラズベリーのような香りがした。

改めて間近で見るとやっぱり可愛い。笑えばもっと可愛いに違いない。

「葛城さん、貴方が本当に私の婚約者だと言うのなら、もっと敬意をもって接して欲しかったです」

しかし、笑うどころか子鹿のような目を吊り上げて抗議してくる。

敬意?面白いこと言うな。

思わず笑ってしまった。

自分の立場をわきまえず、一丁前に権利を主張してくる辺りが生意気だ。

大人しくて従順そうに見えたけど、一筋縄じゃいかないらしい。


さて、どう調教してやろうか。