婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

私達はキッチンに忍び込み、ビールとワインを失敬した

今晩は匠さんの部屋で女子会、という名の酒盛りだ。

黒い皮張のソファに向かい合って座り、プルタブを空けると炭酸の抜ける音がする。

「かんぱーい」と言って二人は缶ビールをコツンとぶつけた。

「っだー!」

燁子さんは一気にビールを飲み干すと、おっさんのようなため息をついた。

改めて燁子さんを傍からじっくり眺める。

マキシ丈のワンピースからスラリと伸びた長い腕に抜けるような白い肌。

おっさんくさい言動とは裏腹に無防備な自然体の美しさに同性の私でもドキドキしてしまう。

「こうやって匠さんと一緒に飲んだりするの?」私はさりげなく尋ねる。

「ああ、たまにね。あと一緒にDVD見たりもするよー」

こんな人をいつも目の当たりにしていたら、確かに私のガキくさい寝巻姿を見たところで何とも思わないだろう。

匠さんがお泊りした時に、私に手を出さないでいられたのも何となく納得だ。

「匠ちゃんの部屋っていつも綺麗で快適なんだよねー」

燁子さんはソファの背もたれに寄りかかる。

「本当。無駄なものは一切排除って感じ」

私は部屋の中をグルリと見渡す。

「人柄をそのまま表してるわね。超合理的、現実的、理性的、それが兄」

思いがけない燁子さんの辛辣な見解に私は目を見張る。

「なんでも卒なくこなす優等生なのよ、匠ちゃんは」

燁子さんはグビっとグラスの赤ワインを煽る。

「この部屋、エロ本とかないのかな」

突然立ち上がって家探しを始めた。

「ちょっと!駄目だよ燁子さん!勝手にいじったら怒られるって」私は慌てて止めに入る。

「だってさー、見つけたいじゃん、匠ちゃんの弱み」

燁子さんは悪魔のようにニヤリと笑う。

まぁ…確かに。