婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

私が悲しみに打ちひしがれていても、つつがなく花嫁修行は取り行われる。

お腹が痛いと仮病を使って休もうかとも思ったけど、轟さんにはきっとバレバレだろうからやめておいた。


本日のレッスンは日舞である。

現在私は、演目「高砂」を習得中だ。

「腰をもっと落とすんだよ!」

「指先までしっかりのばす!」

たま子師範のお扇子が容赦なく私を襲う。

「遥!なんなんだい!お通夜みたいな顔して!」

「す、すみません」私はガックリと項垂れる。

「おまえ百まで わしゃ九十九まで 共に白髪が生えるまで、夫婦がいつまでも仲よく暮らしていきましょうよっていう結婚と長寿の舞なのに、そんな暗い顔して踊っていたら台無しだ!」

結婚…長寿…

たま子師範の言葉に思わず涙が溢れた。

「無理です…今の私には無理です…」

「まぁ、あんたは確かに筋がいいとは言えないけど、きちんと練習すれば踊れるようになる。泣くほどのことじゃないだろうに」

たま子師範は突然泣きだした私にちょっと引いている。

「違います…そう言う意味じゃないんです…」

頬を伝って涙がボタボタと手の甲に落ちる。

たま子師範はヤレヤレ、といったように眉根を寄せた。