婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

二人の後ろ姿を見送りながら瑞希はキラリと目を光らせて私に視線を向けた。

「葛城さん、とうとう稼業を継ぐのかしらねえ」

「卒業後直ぐにお義父さんの後を継ぐって事はないと思うけど」

私は飲みかけのミルクティーをこくりと口に含む。

「田中さん達がよく話せって言ってたじゃない?まさか葛城氏が卒業と同時に結婚…なあんて事になったりー」

「そそそそんなあ!まっさかあ!」

なんて言いつつも満更でもない笑みをうかべる。

葛城夫人…悪くない、悪くないわ。

そこで私はハッとする。

「今日、バ、バイトだった!」私は荷物を鞄に詰め込み慌てて席を立つ。

「ご、ごめん!瑞希!先行くね」

「いってらっしゃい、葛城夫人」

瑞希に冷やかされながら慌ててバイト先へと向かった。

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バイト先のカフェであるSAKUへとダッシュで駆け込む。

ギリギリセーフ…

私は着替え終わると、息を切らしながらフロアへ出て行く。

「す、すみません」

「あら遥ちゃん、お疲れ。今日はお稽古?」

沙織さんは空いた食器をキッチンへ運びながら言う。

「今日はおやすみだったので学校の課題を仕上げてて」

「花嫁修業もあるのに大変ねえ」と言って沙織さんは小さくため息を着いた。

葛城父は生活費を負担すると申し出てくれたが、身の回りの物は自分で揃えたい、という私の意向を尊重してくれた。

そのため花嫁修業が始まってもSAKUでのバイトは続けている。

「全然大丈夫ですよ!」

瑞希の冷やかしをほんのり間に受けて、今日の私はテンション高めだ。

店のドアが開いたのでお客様を満面の笑みで出迎えた。