婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

「おい、遥」

帰りがけオーナーに声を掛けられ手招きされる。

「なんすか?」

オーナーは私に「プレゼント」と言ってお高めな赤ワインのボトルを手渡す。

「こんな…シャンパンをいただいた上にプレゼントなんていただけません」

「いや、お詫びだから」

「…へ?」私はきょとんとして聞き返す。

「キスの話な、実は俺の作り話だ」

「ええ!」私は思わず声をあげる。

「盛り上がるかなーと思って悪戯心で言ったんだけど、葛城少年には、その、ナイショな」

オーナーはテヘっと笑う。

「どうした?遥」匠さんが私の大声に驚いてこちらに歩み寄ってくる。

その顔はなんだかグッタリしていた。

「あの、オーナーからワインいただいて感激しちゃったの」

「二人で仲良く飲んでくれ」

オーナーは爽やかに言う。

「ありがとうございます!」

匠さんは二コリと嬉しそうに微笑んだ。

私が残酷な真実を匠さんに話すことが出来なかったのは、言うまでもない。