婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~

匠さんが見世物になるのを躊躇っていると、これまた絵梨に突き飛ばされてよろけながら前に出て来た。

すかさずオーナーに腕を掴まれ強引に私の前まで連れてこられる。

匠さんは笑顔が引き攣りすごく嫌そうだ。

「ちょっと、そこまで嫌そうな顔するのは失礼じゃない?!」私が小声で言うと「だって…恥ずかしいじゃないか」と、匠さんはボソリと呟く。

まぁ、そりゃそうだ。

しかし会場からは『キス』のコールが湧き上がり、このままじゃ終われない空気だ。

匠さんは諦めたように私の頬にチュっとキスをした。

お茶を濁したようなキスに会場からはブーイングがおこる。

「なんなのよ!まどろっこしい!」

そんな私たちの様子に業を煮やし、絵梨が突如前に姿を現す。

「キスってのはこうゆう風にするのよ!」

絵梨はグイと腕をひっぱり、強引に唇を塞いだ…私の。

会場は異様な熱気に包まれる。

絵梨が私の唇をようやく解放すると何故か拍手喝采だ。

その様子を見て調子にのった藤原が「じゃあ!こいつも!」と言って、何故か自分ではなく親友田中を突き飛ばす。

田中は無表情のままフラリと前に出て来た。結構乗り気のようだ。

そのまま無言で歩みよる。

…匠さんに。

「おい、稜冗談だろ?やめろよ」

匠さんは本気で怯えて逃げようとするが、オーナーにバックをとられガッチリと羽がい締めにされた。

「おい!遥!助けてくれ!」

匠さんは悲壮感溢れる悲鳴をあげるが、私は何もしてあげられず力なく微笑む。

田中は耳元で何か囁くと、そのまま匠さんの唇を奪った。

会場には悲鳴に近い大歓声が湧きおこる。

クールな田中は親友相手に意外にも情熱的なキスシーンを繰り広げた。

私はザマ―ミロ!と腹を抱えて大笑いする。

「あー、あれ絶対舌入ってるねー」絵梨はボソリと呟いた。

私の20のBirthDayの最後は異様なキスシーンで締めくくる。

こんなんで、私の20代は大丈夫だろうかと少し心配になってしまった。