「本日は、お忙しい中、貴重なお時間をいただいき、葛城商事就任式にお集まりいただきまして誠にありがとう御座いました。本当に嬉しい限りです…と、言っても、まだ私は入社すら許されていない身分ではありますが」

葛城が肩を竦めると会場にクスクス笑いが起こる。

「誕生日を迎えるにあたり、たくさんの皆様より心温まるお言葉をいただきまして感謝感激しております。これからは一つ年を重ねたことを自覚し、いち早く社会へ貢献できるよう日々精進して参りますのでご指導、ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。本日は誠にありがとう御座いました」

葛城は深々と頭を下げる。

会場に拍手が鳴り響いた。

淀みなく堂々と話すその様は本当に立派だった。私もうっとりしながら拍手する。

「私事で大変恐縮ですが本日皆様へご報告がございます」

私がこくこく頷いていると葛城父は「おっと!出番だ」と呟き、訳の解らぬ私をステージの裾まで引きずっていく。

「はい、遥ちゃん、頑張って!」

絶対的なゴリ押しスマイルを浮かべると、私の背中を突き飛ばした。

よろめきながら壇上にあがると会場の視線が一斉に注がれたのを感じて、ごくりと生唾を飲みこんだ。

私は緊張した面持ちでステージ中央にいる葛城の元へ歩み寄る。

「21歳の誕生日を迎えるに辺り、小森遥さんと正式に婚約致しました事を皆様へご報告申し上げます」

葛城が告げると、会場は拍手で沸いた。

「大変おめでたいご報告に続き、ここで婚約者の小森様より一言頂戴致します」

司会者の進行に思わず耳を疑った。

な、何それ…聞いてないんですけど…。

私は引き攣った表情を葛城に向ける。