彩さん達と別れると、殴られた後を何とか誤魔化すため、私は一旦中座して先ほどメイクをしてもらったサロンへと向かう。

「あらあら、どうしたの?小森さん。着崩れちゃったー?」

着付けのおばちゃんが呑気に言いながら店の奥から歩いて出てきた

私の顔を見てギョッとした顔をする。

「どうしたの?!その顔!」

いや、ちょっと…と言って私は苦笑いを浮かべる。

「まさか、今問題になってるDVDってやつ?!」

DVD…映画かよ、と思わず心の中で突っ込む。

「いや、ちょとした痴情のもつれ…ってやつです」

あらまー怖いわー、と言っておばちゃんは眉を顰める。

「こっちいらっしゃい」

おばちゃんに促され鏡の前の椅子に腰を下ろす。

赤くなった箇所にコントロールカラーを指先で叩くように塗り込んで行く。その上からお粉をハタハタとはたいた。

鏡を見ると、赤くなった頬が見事にカバーされている。

「ありがとうございます」お礼を言って私は立ち上がる。

「今度は結婚式でいらっしゃい」おばちゃんはニカっと笑った。結構シッカリしている。


会場に戻るとすぐに、「小森様」とホテルの従業員に呼び止めら、中央のステージの方へと連れて行かれる。

「遥ちゃん、どこいってたの?逃げたと思ってヒヤヒヤしたよ」

葛城父は私の姿を見るとホッとしたようにため息をついた。

「すみません。お化粧を直していました。入念に」私は取り繕うようににっこり笑った。

「次は匠の番だよ」

ステージの方に視線を向けると、盛大な拍手で迎えられ葛城はゆっくりと壇上に上がる。

正面に向き直し小さく咳払いした。