「今度一緒に食事に行こう」

私はギョッとして見返すと「彩と匠君と四人でな」と付け加え、大樹はニッコリと笑みを浮かべた。

大樹は強面だけど、笑うとすごく優しい顔になる。そのギャップに思わずときめきそうになってしまた。

「わーい！行きたい行きたい！」彩さんは嬉しそうにキャッキャとはしゃぐ。

大樹はスマートに内ポケットからヴォッティガヴェネタ名刺入れを取りだし、名刺を一枚私に差し出す。

そこには『五十嵐建設　取締役　五十嵐大樹』と記されていた。

五十嵐建設…日本の五大ゼネコンのうちの一社である。

リストでは取締役の佐々木義春さんが来ることになっていたハズだ。

同じ五十嵐という姓からして、一族の方が出席されたのだろうか。

「彩がこんな状態だから俺たちはもう帰る。今度連絡して」

「は、はい」私は慌てて頷いた。

「今日は彩の面倒を見てくれてありがとな。末長いお付き合いをよろしく頼むよ、若奥さん」

「こ、こちらこそありがとうございます！」私は深々と頭を下げた。

大樹に促されると、彩さんビシッと敬礼し、パーティー会場を後にする。酔っ払うと本当に愉快な人だ。