「柚ー?」


 家の中からママの呼ぶ声が聞こえてきた。

 あっ、やば、お皿とか片付けてないや。


「ごめん、ミミさんちょっと行ってくる。……玄関で待っててよ」


 ドアを大きく開いて招き入れようとすると、ミミさんは顔の前で小さく手を振った。


「お気遣いありがとうございます……けど、大丈夫です」


 別に、あたしの前なんだからそういうのいいのに……。面倒くさいなぁ。



 申し訳なさそうに微笑んだミミさんを目に写してから、ゆっくりドアを閉めママを探す。


「ママー、なにー?」


 とりあえずリビングに行くと、さっきまではいなかったはずなのに、いつの間に行ったのかママがお皿を片付けていた。

 それは、あたしが使った白いお皿。



「あの子、来たの? 随分と早いわね……」


「まぁね。お皿を片付けてくれてありがと」


 苦笑混じりに言うと、ママも微笑んだ。

 泡まみれのスポンジで白いお皿とコップを洗いながら。


「はい。待たせちゃ悪いから早く行きなさいよ?」


「うん……」



 少し、心に引っかかっていた。昨日のママの反応。

 あれはなんだったんだろう。

 あたしが魔法界に行っちゃいけない理由(ワケ)でもあったのかな。