「あのー、ミミさん……。まだ一〇時じゃないけど」


『えぇっ!? 本当ですか……!? すすすすいません!!』


「まぁいいけど。じゃあひとまず家来てよ」



 住宅のある奥へと続く扉をボタン一つで開ける。


『ひぇぇ!?』

 
 それに驚いたミミさんが、扉とあたしの方を交互に見つめた。


「早く通らなきゃ閉まっちゃうよ。じゃあまたね!」



 ガチャッと受話器を勢い良く元の場所に置き、一方的に繋がりを切ると駆け足で出しっぱなしの椅子に腰を下ろす。

 やばいやばい、早く食べなきゃ。


 それからあたしは、五分と経たないうちにハムチーズトーストをぺろりと平らげた。


 初めてだったけどなかなか美味しかったな。また今度やろう。


 ……ってあれ? ミミさんまだ来ない?

 いくらなんでも遅すぎる。

 迷ってんのかな……。うん、ミミさんなら簡単にその様子が想像できるよ。



 と、想像を膨らませていたら再び鳴るチャイムの音。

 玄関に駆け、ドアを開けると立っていたのはピシッとした姿勢のミミさん。

 
 空気はふんわり暖かくて、心地が良い。

 
「なんだ、来れたんだ……」


 思わず呟くと、案の定ミミさんがぷんすかと小さく怒る。


「失礼ですよ、柚葉様。来れないわけないじゃないですかっ。……なんて、本当は少し迷いましたけど」


「え?」


「なんでもないです! それより柚葉様、準備の方は大丈夫ですか? 私早く来てしまったそうですし……」


「オッケーオッケー。大丈夫だよー」