「……だからさっきからなにっ?」


「……ネックレス」



 か細く呟かれた言葉を拾えず、あたしは耳の横に手を添えて聞き返した。


「え!?」


「ネックレス。魔法界に行っても絶対に絶対に、外さないでね」


「ネックレスって……これのこと? だよね」



 確認するようにあたしがジャージの下から取り出したのは、肌身離さず付けていたネックレス。 

 シンプルなデザインの中で瑠璃色の石が目を引いている。


 まだあたしが小さい頃に、ママからお守りと貰ったものなんだ。




「うん、そう。このネックレスは柚を守ってくれるから……」


「大丈夫だって。今までもずっと付けてきたんだから今更外せないくらいだよ」



 ママはどこか淋しそうに微笑むと、「明日なんだから早く支度しなさいよ」と言ってからリビングの扉を開ける。


 部屋に入っていくその背中を見つめながら。

 すっかり静かになった玄関で、掴めない状況に目を瞬かせた。