「ドリア!!」


 今まで存在感が全く無かったミミさんが慌てて返事をした。年下のあたしが言うのもなんだけど、なんだか可愛らしい。


「じゃあね、また明日……お休み。柚葉ちゃん」


「あ、はい、おやすみなさいです」



 うむむ、年上の人へのおやすみはなんと言えばいいんだろう……。


 不自然な敬語を用いてあたしが返すと、女王さまは柔らかい笑みを浮かべてゆっくりと消えていった。

 きっと魔法界の方で、ここの言葉で言うと――――通信を切断したんだろう。



 ミミさんは話が終わるとすぐに一礼し、謝ってから静かにあたしの住む家を出て行った。



 
 ママの反対を押し切って魔法界行きを決めたようなものだから、なにを言われるのか少し恐ろしいんだけど……。
 
 きっと、こっぴどく叱られちゃうんだろうな……。

 それに女王さまにガン無視されてたし、怒り倍増じゃんか。


 たらり、と冷や汗を垂らしながら恐る恐るママの顔を見る。

 その割と整っている顔はありえないくらい蒼白で、呆然と女王さまの顔があった場所に視線を向けたまま。



 ほんと一体何なの﹏﹏﹏﹏!? なんで行っちゃ駄目なのか理由が気になるよ。それさえも教えてくれないのに行っちゃ駄目なんて理不尽。



 むっすーとハリセンボンみたいに頬を膨らませながらママを見ていたら、ふと視線が合う。


 その状態が十秒ほど続き、すぐに耐えられなくなったあたしが声をあげた。


「……な、なに……?」


 
 そんなに見つめられるといにくい……。



「……」