そう。今のあたしはそんなこともどうでもいいくらいに、ママの帰宅という事実に絶望的な気持ちを抱いていた。


 
 忙しいママのストレスにはなりたくないのに……。


 流石にもう中学生、母子家庭である家庭のことだって考えたりするものだ。

 なのにあたしってば怒られてばっかりで、ママの枷(カセ)になってばっかじゃん……。



 重く感じる頭をゆっくり上に上げた。今のあたしの目、死んでるだろうなと思いながら。



「……あたし、女王さまのお城に泊まらせてもらおうかな……」




 漆黒の、どこまでもどこまでも続くような空に浮かぶ月は、片側が少しだけ丸くなった半月。

 明るくて、比喩ではなく月の模様が見えるようだった。



 でもこの明かりは太陽のお陰なんだよね……。月が発光してるわけではない、という話を聞いて衝撃を受けたのを覚えてる。



 ミミさんは心配そうな顔であたしを見つめていた。



「女王さまがどう言うかは分かりませんが……私は女王さまの命令を実行しなければいけない義務がありますし、人間界でいうと明日は水曜日ですよね。中学生である柚葉さまは学校に行かなければいけないと思いますが……」



 ま、まさかそんな言葉がミミさんから出てくるとは思わなかった。


 普通に良いですよって言われると思ったし……命令を遂行とか……あたしの住む世界に聞きなれない単語で変な感じ。