「……さま! ……さま﹏﹏! 柚葉さまっ!」


 
 声に驚いて、飛び上がると同時に瞼(マブタ)を開ける。



 ……あれ、ここは……。


 すっかり視界は暗くなり、マンションの階段の間あいだから見える白く光る街灯は、闇の世界の道標のようだ。

 辺りを見渡すと見慣れたあたしんちのご近所さんち。そして、明かりの灯るあたしの家。



 明かりの……灯る……!?

 
 やばい、ママ帰って来ちゃってる。説教は決定事項となってしまった。



 
 慌てて立上がり、家の前でマンション特有の門を見つめる。

 うぅ、家の中に入るのが怖い……。どうしよう。



 自分の家の前で頭を抱え、苦悩していると背後から悲痛な少女の声。



「柚葉さまぁ、存在を無視しないで下さいぃ……」



 はっ。ミミさんのこと忘れてたよ……っていうか。


「ごめんねミミさん。それより、あたしの記憶が空飛んでる途中から無いんだけど……」


「ひ、酷い……。でもまぁ、もういいです。

 それに関してはすいません……。魔法界と人間界を繋ぐ場所があるのですが、知られると色々とマズイので意識を失って頂きました」



 な、そうだったの!?

 じゃあ行きのあたしの気絶はミミさんの仕業? それともあたしが勝手になっただけで、手間が省けてラッキーってとこなのかな。


 でももう、いいや別に……。そっちにだって色々と都合ってもんがあるだろうし。仕方ない。