いつもならなんだろうと気になって見るところだけど、無礼なことをしたら……という恐怖と緊張で、強張った身体は前しか向けずにいた。


 ……あぁ、もうほんとにどうしよう。

 いきなり連れて来られて女王さまに会えって急すぎる。


 女王さまが直接会いに来てくれれば良かったのに。……なんて口が避けても言えないけど。



 さっき部屋に入ってきた人だろう、一人のメイドさんがあたしに紅茶とショートケーキを出してくれた。

 静かな部屋に、食器を机に置く音が響く。


 置かれた褐色の液体が揺れ、ふわりと甘い香りを漂わせた。

 一緒に置かれたケーキはごく普通のショートケーキだった。



「三分後、女王さまが参ります。そちらのものを召し上がって待っていて下さい」



 彼女はそう言うと綺麗な礼をし、紅茶やケーキを乗せていたトレーを腕に挟んで部屋を出て行った。




 ……食べて、いいんだよね。

 お城のケーキを食べる機会なんてさらさらないし、部活帰りでお腹ペコペコだから遠慮なく頂くことにします。



 紅茶のカップも下の小さなお皿も金色の縁で、カップの上半分、お皿の縁近くに森の中を飛び交う鳥達がプリントされていた。真ん中には丸い赤に金色でかかれたなにかの紋章。

 なんて豪華な……。あたしが使っていいのか、すごく不安になるよ。

 それにしてもメイド服といいお城といいこのティーカップといい……このお城にまつわるものは赤が多いのは気のせいかな。