そのせいか、あまり異世界に来たという実感がなかった。


 
 じっくりと魔法界を見渡していたあたしに、ミミさんがそろそろと声をかけてくる。



「では、そろそろ城に参りましょう」



 ミミさんは言ったけど、あたしはまだ心の準備ができてなくて……!



「待っちょ待っちょ待っちょ! あたしに会いたい人ってお城にいる人なの……?」



 こくんと縦に動かされる黄色い頭。


「はい……私のお仕えする女王さまです」


「女王さま!?」



 う、うそうそうそうそ。異世界の女王さまがあたしになんの用なの……!?

 こんなどこにでもいるような中学生なのに。



 もしや、この国を助けて下さいとか勇者になって下さいとか言われたりして?
 
 魔法がありえるんだからそういった話も無碍(ムゲ)にできない。



「どういったご用件で……?」



 試しに尋ねてみても、ミミさんは「ただ連れてきてとしか言われてないので……」と申し訳なさそうにするだけだった。




 それならもう直接会って話を聞く他ない。早く帰らないと時間も危ないんだった。